2026.10.10
監修者: 代表取締役 山口 元紀
腰痛に効く筋トレとストレッチ|原因となる筋肉と避けるべきケースをトレーナーが解説
目次
腰は重たい上半身を支え、立つ・座る・歩くといったあらゆる動作の起点となる部位です。そのぶん日々の負担も大きく、厚生労働省「2025(令和7)年 国民生活基礎調査」でも、病気やけがなどで自覚症状がある人のうち、男女ともに最も多い症状は「腰痛」でした[1]。
・デスクワークが続くと腰が重だるくなる
・腰痛には筋トレが良いと聞くが、何をすればいいか分からない
・筋トレでかえって腰を痛めないか不安
この記事では、こうした悩みを持つ方に向けて、腰痛と筋トレの関係をエビデンスから整理したうえで、腰痛に関わる筋肉、自宅でできるストレッチと筋トレ、筋トレを避けるべきケースまでを解説します。
腰痛に筋トレは効果がある?エビデンスから見る運動療法
慢性腰痛には「運動療法」が強く推奨されている
日本整形外科学会・日本腰痛学会が監修する『腰痛診療ガイドライン2019』では、3か月以上続く慢性腰痛に対して運動療法は有用であるとされ、強く推奨されています(推奨度1、エビデンスの強さB)[2]。コクランのシステマティックレビューでも、運動は慢性腰痛の痛みを軽減する可能性が高いと報告されています[3]。
一方で、ぎっくり腰のような急性腰痛については、運動療法の有効性を示す十分なエビデンスはないとされています[2]。「腰痛=とにかく筋トレ」ではなく、痛みの時期と状態に合わせて運動を選ぶことが大切です。
「腰痛の85%は原因不明」は過去の定説
かつては「腰痛の約85%は原因を特定できない非特異的腰痛」といわれてきました。しかし、整形外科医が詳細な診察を行った「山口県腰痛スタディ」では約78%の腰痛で原因が特定され、非特異的腰痛は約22%にとどまりました[4]。特定された原因には、椎間関節性や筋・筋膜性の腰痛などが含まれます。
つまり腰痛には、筋肉や筋膜へのアプローチが有効なものと、医療機関での治療が優先されるものが混在しているということです。椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症などの診断を受けている方は、まず医師の指示に従ってください。この記事では主に、同じ姿勢の継続や筋力低下、筋肉の緊張が関係する腰痛を対象にしています。
腰痛に関わる5つの筋肉
腰痛というと腰そのものに目が向きがちですが、実際には腹部・背中・お尻の筋肉が連動して腰椎を支えています。
内外腹斜筋(ないがいふくしゃきん)
脇腹にある筋肉で、深層を内腹斜筋、表層を外腹斜筋と呼びます。体幹を固定したり、体をひねったりするときに働きます。この筋肉が弱ると腰が安定しにくくなり、腰痛につながることがあります。
腰方形筋(ようほうけいきん)
肋骨の下部から骨盤にかけて、腰の深い部分にある筋肉です。腰椎を左右から支え、姿勢を安定させる役割があります。弱ったり硬くなったりすると、片側の腰が痛む、体をひねると腰が痛むといった症状が出やすくなります。
脊柱起立筋(せきちゅうきりつきん)
背骨に沿って頭部から骨盤まで伸びる長い筋肉で、姿勢の保持に欠かせません。この筋肉が弱ると背骨のカーブが強まり、腰に負担がかかりやすくなります。
広背筋(こうはいきん)
背中の中央から上腕、骨盤までを広く覆う大きな筋肉です。肩や肩甲骨の動きに関わり、猫背や巻き肩を防ぐ役割もあります。弱ったり硬くなったりすると姿勢が崩れ、腰や背中の痛みにつながりやすくなります。
臀筋群(でんきんぐん)
大臀筋・中臀筋・小臀筋からなる、お尻の筋肉の総称です。骨盤を安定させ、歩行や下半身のバランスを支えています。臀筋群が弱ると骨盤が不安定になり、腰椎に負担がかかることがあります。
ポイントは、筋力が足りずに「弱っている」筋肉と、緊張して「硬くなっている」筋肉の両方が腰痛に関わることです。弱い筋肉は筋トレで、硬い筋肉はストレッチで整える。この両輪が腰痛対策の基本になります。
腰痛の鍵を握る「胸腰筋膜」

胸腰筋膜は、背中の下部から腰にかけて広がる厚い筋膜で、ちょうど腰痛を感じやすい場所に位置しています。お尻の「大臀筋」と、反対側の背中の「広背筋」をつなぎ、背中や腰が丸まらないよう支える役割を担っています。
大臀筋と広背筋が硬くなると腰が緊張する

大臀筋や広背筋が緊張して硬くなると、対角線上にある2つの筋肉が胸腰筋膜を引っ張り合い、腰まわりが常に張った状態になります。腰をマッサージしてもすぐに重だるさが戻るのは、この張りが残っているためかもしれません。
腰痛対策では、腰だけを見るのではなく、大臀筋と広背筋の柔軟性を高め、胸腰筋膜の張りを適切に保つ視点が欠かせません。
筋トレ前に行いたい腰痛ストレッチ5選
筋肉が硬いまま筋トレを始めると、本来使いたい筋肉が働かず、腰で代償しやすくなります。まずはストレッチで緊張をゆるめましょう。いずれも痛みを感じたら中止してください。
① 大臀筋と広背筋の同時ストレッチ


1. 画像のように、片側のお尻(大臀筋)が伸びる姿勢をとる
2. 伸ばしているお尻とは反対側の腕を前に伸ばす
3. 左右30秒ずつ行う
左の大臀筋と右の広背筋のように、胸腰筋膜でつながる筋肉を同時に伸ばせるため、腰の張りをゆるめるのに効果的です。
② キャット&カウ(呼吸つき)


1. 四つ這いになる
2. 息を吐きながら背中を丸める
3. 最も丸まった位置で、背中や腰に空気を送り込むように呼吸する
4. 5回ほど繰り返す
背中を丸めた状態で呼吸を入れると、内側から胸腰筋膜が広がり、ストレッチ効果が高まります。
③ 内外腹斜筋のストレッチ

1. 椅子に座り、背筋を伸ばす
2. 左手を腰に、右手を左膝に当てる
3. 右手をすねに向かって滑らせながら上半身をひねり、顔を天井に向ける
4. 深呼吸しながら15秒キープし、反対側も行う
④ 腰方形筋のストレッチ


1. あぐらで座り、左右の坐骨に均等に体重を乗せる
2. 息を吸いながら左手を真上に上げる
3. 息を吐きながら右側へ体を倒し、5〜10呼吸キープする
4. そのまま上半身を前に倒して5〜10呼吸キープし、反対側も行う
⑤ 脊柱起立筋のストレッチ


1. 椅子に座り、背中を軽く丸める
2. 下半身は動かさず、上半身を斜めにひねる
3. 深呼吸しながら20秒キープし、反対側も行う
下半身が一緒に動くと軸がぶれるため、骨盤は正面に向けたままひねるのがポイントです。
腰痛改善・予防におすすめの筋トレ6選
負荷の低い種目から順に紹介します。まずはドローインやヒップリフトから始め、痛みが出ないことを確認しながら段階的に種目を増やしましょう。
ドローイン

1. 仰向けで膝を立て、両手をお腹に当てる
2. 口からゆっくり息を吐きながらお腹をへこませる
3. へこませた状態で浅い呼吸を続け、10〜30秒キープする
腹部の深層にある筋肉が働き、体幹の安定につながります。立ったままや座ったままでもできるので、仕事の合間にも取り入れやすい種目です。
ヒップリフト

1. 仰向けで膝を90度に曲げて立てる
2. 肩・骨盤・膝が一直線になるまでお尻を持ち上げ、3秒キープする
3. ゆっくり下ろす
上げすぎて腰を反らせないことが最大のポイントです。お尻を締める意識で、大臀筋の力で持ち上げましょう。
クランチ

1. 仰向けで両脚を上げ、膝と股関節を90度に曲げる
2. 頭の後ろで手を組み、おへそをのぞき込むように上体を起こす
3. 床につく手前まで戻し、繰り返す
肩甲骨が床から浮く程度で十分です。手で首を引っ張らないよう注意し、前かがみで腰の痛みが強まる方は控えましょう。
スーパーマン

1. うつ伏せになり、両腕を頭上へまっすぐ伸ばす
2. 両腕と両脚をゆっくり持ち上げ、3〜5秒キープする
3. ゆっくり下ろす
高く上げることより、手足を遠くへ伸ばす意識が大切です。腰を反らすと痛む方は、四つ這いで対角の手足を伸ばす「バードドッグ」に変更しましょう。
ツイストクランチ

1. クランチと同じ姿勢をとり、両手を後頭部に当てる
2. 上体をひねりながら起こし、右肘を左膝の外側に近づける
3. 戻して反対側も行う
肘を膝に近づけるよりも、肋骨を反対側の骨盤に近づける意識で行うと、腹斜筋に効かせやすくなります。負荷が高いため、トレーニングに慣れてから取り入れましょう。
スクワット

1. 足を肩幅に開き、つま先をやや外側に向ける
2. 股関節から折りたたむように、お尻を後ろへ引きながら下ろす
3. 太ももが床と平行になったら、ゆっくり立ち上がる
腰を丸めたり反らしたりせず、背骨を一定に保つことが重要です。不安がある方は、椅子の座面にお尻が触れたら立ち上がる「椅子スクワット」から始めましょう。
「腰痛には体幹トレーニング」は本当?
腰痛対策として「プランク」などの体幹トレーニングが定番になりつつありますが、運動療法の種類による優劣は、現時点では明確になっていません[2]。
Dr.トレーニングでは、すでに腰まわりが緊張しているタイプの方には、プランクの優先度を下げています。プランクは胸腰筋膜をゆるめるのではなく、張りを高める方向に働くため、まずはストレッチや臀筋のトレーニングで張りを整えることを優先しています。
腰痛を悪化させない筋トレの進め方
・頻度:週2〜3回を目安に、同じ部位は1〜2日あけて回復させる
・痛みの目安:運動中に痛みが強まる、翌日まで痛みが残る場合は負荷が高すぎるサイン。回数や動かす範囲を減らす
・呼吸:力を入れるときに息を止めず、リズムよく呼吸を続ける
・質を優先:回数をこなすより、正しいフォームで狙った筋肉を使うことを優先する
・継続:筋力や柔軟性の変化には時間がかかるため、まずは2〜3か月を目安に続ける
【注意】筋トレを控えるべきケースと受診の目安
ぎっくり腰など急性の強い痛みがあるとき
炎症が起きている時期に無理に筋トレをすると、症状が悪化するおそれがあります。ただし、長く安静にしすぎると筋肉が固まり、回復が遅れることもあります。筋トレは控えつつ、痛みの範囲内で日常の動作は続け、医師に相談しながら少しずつ運動を再開しましょう。
腰の疾患で治療中のとき
椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症などで治療中の方は、自己判断での筋トレは避けましょう。誤った方法で行うと患部に負担がかかり、症状が悪化する可能性があります。
筋力が大きく低下しているとき・筋肉痛が強いとき
長期療養などで筋力が大きく落ちている場合は、歩行などのリハビリから始めましょう。また、筋肉痛は筋肉が修復途中であるサインです。痛みが引くまでは休養を優先してください。
すぐに医療機関を受診すべきサイン
次のような症状がある場合は、筋トレを中止して医療機関を受診してください。
・安静にしていても痛む、夜間に痛みが強くなる ・発熱を伴う ・脚のしびれや、力が入りにくい感覚がある ・排尿・排便に異常がある ・転倒などをきっかけに痛みが出た
なお、Dr.トレーニングでは医療機関と連携したリハビリトレーニングにも対応しています。診断内容を踏まえたトレーニングが可能ですので、体の痛みにお悩みの方はご相談ください。
腰痛の人が日常生活で気をつけたい3つのこと
同じ姿勢を続けない
背筋を伸ばした「良い姿勢」でも、長時間続ければ同じ筋肉や筋膜に負担が集中します。どれだけ良いトレーニングをしても、その後何時間も同じ姿勢でいれば腰痛は起こり得ます。30分〜1時間に一度は立ち上がる、スタンディングデスクと椅子を使い分けるなど、こまめに姿勢を変えましょう。
湯船に浸かる
ぬるめのお湯に15〜20分ほど浸かると、筋肉の緊張がほぐれて血行が促され、腰の痛みが和らぐ場合があります。熱すぎるお湯は交感神経を高め、寝つきを悪くするため避けましょう。
腰に負担の少ない寝方をする
腰への負担が少ないのは、横向きで膝を軽く曲げた姿勢です。仰向けで寝る場合は、膝の下にクッションを入れると腰の反りが軽減されます。痛む側を下にすると痛みが強まることがあるため注意しましょう。
よくある質問
Q1. 腰が痛いときに筋トレをしても大丈夫ですか?
慢性的な腰の重だるさであれば、痛みが強まらない範囲での運動はむしろ推奨されています[2]。ただし、急性の強い痛みや、しびれなどの神経症状がある場合は控え、医療機関を受診してください。
Q2. 腰痛には腹筋と背筋、どちらを鍛えるべきですか?
どちらか一方ではなく、腹部・背中・お尻をバランスよく鍛えることが大切です。腰痛のある方は、お尻の筋力が低下していることも多いため、ヒップリフトなどの臀筋トレーニングも取り入れましょう。
Q3. どのくらいで効果を実感できますか?
個人差はありますが、筋力や柔軟性の変化には数週間〜数か月かかります。まずは2〜3か月の継続を目安にしてください。
まとめ
・慢性腰痛には運動療法が強く推奨されている一方、急性腰痛には注意が必要
・腰痛には腹斜筋・腰方形筋・脊柱起立筋
・広背筋・臀筋群が関わる
・大臀筋と広背筋の硬さは胸腰筋膜を介して腰の緊張につながる
・ストレッチで緊張をゆるめてから、低負荷の筋トレで段階的に鍛える
・強い痛みやしびれなどがある場合は、筋トレより先に医療機関を受診する
筋肉や筋膜が関わる腰痛は、適切な筋トレとストレッチで改善が期待できます。
ただし、腰痛の原因や体の状態は人によって異なり、誤った方法では症状を悪化させるおそれもあります。
Dr.トレーニングでは、採用率3%以下の厳選されたトレーナーが、医学的根拠に基づいた500種類以上のトレーニングから、お客様の体の状態に合わせてメニューをカスタムメイドします。腰の痛みがあるときのリハビリトレーニングもご相談いただけます。
無料カウンセリング・体験トレーニングを実施していますので、お気軽にお問い合わせください。
【著者情報】
東田 雄輔
【資格】
・NSCA-CPT (NSCA認定パーソナルトレーナー)
・JATI-ATI (JATI認定トレーニング指導者)
・NASM-PES (全米スポーツ医学協会認定パフォーマンス向上スペシャリスト)
・NASM-GFS (全米スポーツ医学アカデミー認定ゴルフフィットネススペシャリスト)
・IASTM SMART TOOLs
【参考文献】 [1] 厚生労働省「2025(令和7)年 国民生活基礎調査の概況」 https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/k-tyosa/k-tyosa25/dl/14.pdf [2] 日本整形外科学会・日本腰痛学会 監修『腰痛診療ガイドライン2019(改訂第2版)』南江堂, 2019. [3] Hayden JA, et al. Exercise therapy for chronic low back pain. Cochrane Database Syst Rev. 2021;9(9):CD009790. [4] Suzuki H, et al. Diagnosis and Characters of Non-Specific Low Back Pain in Japan: The Yamaguchi Low Back Pain Study. PLoS One. 2016;11(8):e0160454.