2025.05.30
監修者: 代表取締役 山口 元紀
ランニングのための筋トレ、コンディショニングについて
目次
ランニングを行っている理由はさまざまあるかと思います。
「マラソンで完走ができうように」
「マラソンで好タイムを狙うために」
「趣味の一環として」
「ダイエットのために」
etc.
そのランニングを効率良く怪我なく行うために、筋トレやエクササイズは行った方が良いとパーソナルトレーナーである私は考えます。
ただ、一点だけ補足をしておくと、
ランニングを向上させたければ”直接的にランニングの量や時間を確保した上”で「筋トレやエクササイズを行うべき」という考え方です。
まずは「ランニングにおいて筋トレを行うメリット」について解説します。
ランニングにおいて筋トレを行うメリット
ランニングにおいて筋トレを行うメリットを広い領域で挙げる場合、下記の2つとなります。
1.ランニングのパフォーマンスの向上
2.ランニングでの怪我の予防・改善
また、こちらの2つは相互関係にもなるためそれについても後ほど解説します。
ランニングパフォーマンスの向上
ランニングに筋トレやエクササイズを取り入れることで、下記のようなパフォーマンス向上の効果が期待できます。
① ストライド(歩幅)の増加
② ピッチの向上
③ フォームの安定
ストライドとピッチへのメリットについて
①②のストライドとピッチを向上させる要素は主に下記となります。
・筋力の向上
・床反力の適正化、増幅
・神経筋制御の向上
「筋力の向上」
筋力が向上することで、地面に対して強く・速く力を加えることが可能になり、結果としてストライドやスピードの向上につながります。
「床反力の適正化、増幅」
床反力とは「地面を押すことで反作用で生まれる力」のことです。
高くジャンプしようとする時に膝を曲げてしっかりしゃがむと思います。それは「膝を曲げてしゃがむことで時間から力をもらう準備」をしており、床反力を効率よく使うための事前準備です。スクワットやデッドリフトなどの種目を行うことで、地面を押す強さと感覚が向上しやすくなり、結果としてランニングのパフォーマンスに寄与します。
「神経筋制御の向上」
ピッチを上げるということは、1分間に脚をより速く切り替える必要があるため、より高頻度の筋の収縮・弛緩を正確に行う必要があります。
これは中枢神経(脳・脊髄)と末梢神経が効率よく連携して初めて成立します。ランニングで必要とする筋トレを正しく行うことで、反応速度と協調性などの向上につながります。
フォームの安定について
③のフォームの安定性を向上させる要素は主に下記となります。
・「体幹の安定 → 上半身のブレ防止」
・「骨盤・股関節の安定 → 脚運びがスムーズに」
・「片脚支持の強化 → 接地時の安定性向上」
「体幹の安定 → 上半身のブレ防止」
体幹の安定性が低いと、ランニング中に骨盤や肩甲帯が左右にブレてエネルギーロスにつながります。
体幹を中心とした筋トレで、走行中も軸がぶれない安定したフォームを維持しやすくなります。
「骨盤・股関節の安定 → 脚運びがスムーズに」
特に中殿筋や腸腰筋の筋力や動的安定性(動きながら安定させる能力)が低いと骨盤が落ちる(トレンデレンブルグ兆候)など、脚の動きが非効率になりやすくなります。
体幹や股関節周辺の筋トレで骨盤の左右ブレを抑え、脚の振り出しが安定します。
「片脚支持の強化 → 接地時の安定性向上」
ランニングは片脚ずつの連続動作です。片脚支持での安定性や筋力を高めると、接地がブレずに安定し安くなります。また、足関節や膝関節を安定させる筋トレなども行うとより安定感が高まります。
ランニングでの怪我の予防・改善
上でも述べたように、
パフォーマンスの向上と怪我の予防・改善は相互関係にあります。
分かりやすい例だと、
ランナー膝と呼ばれる「腸脛靭帯炎(腸脛靭帯という太ももの外側の靭帯の炎症)」は中臀筋の筋力不足や片足支持での動的安定性がウィークポイントで起こる、というのが一般的です。
そのため、中臀筋の筋トレや体幹+中臀筋などを合わせた筋トレを行うアプローチが一般的です。
パフォーマンスの向上という部分でお話しした「フォームの安定」にも中臀筋を鍛えることをすでに述べておりました。
つまり、「パフォーマンスの向上が怪我の予防にもつながり、怪我をしない身体づくりがパフォーマンス向上にもつながる」ということになります。
ランニングエコノミーについて
ランニングエコノミーとは「走りの経済性」と呼び、
ある速度帯をどれくらいのエネルギー消費量(酸素摂取量)で走ることができるかを示す指標のことです。
「ランニングエコノミーの向上」は、「どれだけ効率的に走れているか」とも言えます。
ランニングに適した筋トレやエクササイズによっての
① ストライド(歩幅)の増加 ② ピッチの向上 ③ フォームの安定
+
ランニングによる
心肺機能の向上
=「ランニングエコノミー」の向上につながります。
冒頭でも述べていますが、ランニングが速くなるにはランニングを行うのが必要不可欠です。
ただ、併せて筋トレを行うことでのメリットもかなりあるので筋トレを加えてみるのはいかがでしょうか?
ランニングに最適な筋トレメニュー
ここでは、ランナーにおすすめの筋力トレーニングメニューをいくつかご紹介します。
これらのトレーニングを継続することで、筋力、動的安定性、床反力などが向上し、より効率的に、怪我なく走ることにつながります。
1セットあたりの回数やセット数は、ご自身の体力レベルに合わせて調整しましょう。初心者の方は少ない回数・セット数から始め、徐々に増やしていくのがおすすめです。
カーフレイズ
鍛える筋肉:腓腹筋、ヒラメ筋
動作の簡単な解説:壁に手を付いて、つま先立ちの状態から更に踵を浮かせます
地面を押す際の最後のひとプッシュはふくらはぎのため、そこの筋力を鍛えておきましょう!
ランニングは前に進む運動のため、その前の方向に床反力がもらえるように身体を前傾して行っているのがポイントです。
注意点:膝が曲がらないように / 頭〜かかとが一直線を意識
HK アダクタープルバック
鍛える筋肉:内転筋群
動作の簡単な解説:HK(片膝立ち)の状態で前に出した脚の外側に目的物を起きます。膝が開かず、その目的物にタッチしに行きます
内転筋は股関節の安定性やランニングでの推進力に必要不可欠の筋肉です!
HK(片膝立ち)で行うことで片足のエクササイズとなるので、ランニングのパフォーマンスにもつながりやすいというのがポイントです。
注意点:後ろ足に体重が乗りすぎないように / 背中を丸めてタッチしに行かないように
ランジウォーク
鍛える筋肉:大臀筋、ハムストリング、大腿四頭筋、 など
動作の簡単な解説:ランジという動作しながら前方へ進んでいきます
お尻、太ももの筋肉を片脚支持でバランスをとりながら鍛える種目です!
単に下半身を鍛えるだけでなくバランスの制御や重心の移動などが含まれるのでランニングのパフォーマンスにもつながりやすいというのがポイントです。
注意点:後ろ足に体重が乗りすぎないように
懸垂(チンニング)
鍛える筋肉:広背筋、大円筋、上腕二頭筋 など
動作の簡単な解説:バーにぶら下がった状態から、バー目掛けて鎖骨〜胸を持っていきます
背中を自重(自分の体重)で鍛える王道種目です!
体幹を制御しながら背中の筋肉を鍛えられる種目というのがポイントです。
注意点:肩が上がらないように、肘の曲げ伸ばしだけにならないように
サイドプランク w/アブダクション
鍛える筋肉:内・外腹斜筋、中臀筋 など
動作の簡単な解説:サイドプランクをした状態から上側の脚をパタパタと開いて、閉じてを繰り返します
サイドプランクに中臀筋も入れた種目です!
体幹を制御しながら中臀筋も鍛えられる種目というのがポイントです。
注意点:肩の真下に肘を置く / 背中が丸まらないように
トレーニングの順番と組み合わせ方
ランニングと筋トレを効果的に両立させるためには、トレーニングの順番や組み合わせ方が重要になります。
同じ日に両方行う場合もあれば、日によって分ける場合もあり、それぞれの目的に合わせたスケジューリングが必要です。闇雲にトレーニングを行うのではなく、体の回復や各トレーニングの効果を最大限に引き出せるように工夫することで、効率的に目標達成を目指すことができます。ここでは、ランニングと筋トレを組み合わせる上での順番や頻度、超回復の考え方について解説します。
ランニングと筋トレの効果的な順番
こちらについてはランニングに対しての向き合い方や、当日のランニングメニューの内容によって変わってしまうので2つのパターンに関して解説をしていきます。
ランニングのタイムを向上させたい方
簡単にいうと「ランニングの優先順位が高い方」の場合について紹介していきます。
ポイント①「ペース走、インターバル走の前には筋トレは行わない」
ペース走やインターバル走はランニングにおいてスピードが速く設定されており、高い心拍数を想定して行ったり、身体への負荷が高いトレーニング内容です。
上記のようなトレーニングの場合、身体の疲労や筋肉痛はない方が良いと考えるため前後で筋トレを行いたい場合は”後”に実施する方が良いと言えます。
ポイント②「ジョグ、LSDの前には筋トレしてもOK」
ジョグやLSD(長い距離をゆっくり走るメニュー)はランニングにおいてスピードは遅く、ゆっくりで設定されており、低い心拍数を想定したトレーニング内容です。
上記のようなトレーニングの場合、身体の疲労や筋肉痛がある場合でも比較的行いやすいメニューであり、アクティブレスト(積極的休養)にもなるため筋トレを前に行っても良いと言えます。
アクティブレストについての詳細はこちら:https://drtraining.jp/media/30508/
このように「ランニングのタイムを向上させたい方」という場合でもメニュー内容によって筋トレのタイミングが変わってきます。
また、筋トレを重視する期間(例:夏など)を設ける場合は上記の解説が通用しない場合もあります。その場合はプロに説明を仰いでいただけたらと思います。
ランニングをダイエットとして行っている方
ランニングをダイエットとして行っている方の場合は消費カロリーを稼ぐため「長い距離をゆっくり走っている」と想定できます。
その場合は、筋トレを前、ランニングを後に行うことを推奨します。
その理由は2つあります。
① 脂肪燃焼効果を最大化するため
筋トレを先に行うことで、成長ホルモンやアドレナリンなどの脂肪分解を促進するホルモンの分泌が増加します。
その後の有酸素運動で、脂肪をエネルギー源として使いやすくなり、脂肪燃焼効率が上がると示されているため。(Kang et al. 2009)
② 有酸素を先に行うと筋トレのパフォーマンスが低下するため
有酸素運動を先に長時間行うと、筋グリコーゲン(筋肉のエネルギー源)が消耗し、筋トレ時の出力が低下します。
これにより、筋肉量の維持や筋トレの効果が低下してしまう。(Drummond et al. 2005)
上記のような理由からダイエット目的でランニングをしている方は、ランニングは筋トレの後に行いましょう!
栄養とコンディショニングで差がつく
ランニングと筋トレの効果を最大限に引き出し、継続的なパフォーマンス向上を目指すためには、適切な栄養摂取と体のコンディショニングが不可欠です。
トレーニングで体に負荷をかけた後は、筋肉の修復と成長に必要な栄養素をしっかり補給し、疲労回復を促すことが重要になります。
特にタンパク質は筋肉の材料となるため意識して摂りたい栄養素です。また、日々の食事全体のバランスも重要であり、トレーニングの質を高めるためには休息も同じくらい大切です。ここでは、栄養摂取や食事のポイント、そしてコンディショニングについて解説します。
プロテインや筋肉 効果アップのポイント
筋力トレーニングの効果をより高めるためには、筋肉の材料となるタンパク質を十分に摂取することが重要です。
プロテインは手軽にタンパク質を補給できるため、トレーニング後の栄養補給におすすめです。特にトレーニング後30分以内は、筋肉の修復・合成が活発に行われる「ゴールデンタイム」と呼ばれており、このタイミングでプロテインを摂取すると効率良く筋肉にアプローチできるとされています。
プロテインの種類にはホエイプロテインやカゼインプロテインなどがあり、それぞれ吸収速度が異なります。トレーニング直後には吸収の速いホエイプロテイン、就寝前には吸収の緩やかなカゼインプロテインなど、目的に合わせて使い分けるのも良いでしょう。ただし、プロテインはあくまで栄養補助食品であり、日々の食事でバランス良く様々な栄養素を摂取することが基本となります。
食事と筋トレの組み合わせ
筋トレの効果を最大限に引き出すためには、食事との組み合わせが非常に重要です。
トレーニングを行う前には、エネルギー源となる糖質を適切に摂取することで、パフォーマンスの低下を防ぎ、集中してトレーニングに取り組むことができます。おにぎりやバナナなど、消化の良い糖質源がおすすめです。トレーニング後には、傷ついた筋繊維の修復と成長のために、タンパク質を豊富に含む食事を摂ることが不可欠です。
鶏むね肉や魚、卵、大豆製品などを積極的に摂りましょう。また、疲労回復を早めるためには、ビタミンやミネラルもバランス良く摂取することが大切です。食事全体を通して、糖質、タンパク質、脂質のバランスを意識し、様々な食品から栄養を摂るように心がけましょう。トレーニングのセット間に軽い栄養補給を挟むことも、パフォーマンス維持に繋がります。
初心者が注意したいポイント
ランニングと筋トレをこれから始める初心者の方は、無理なく継続するためにいくつかの点に注意が必要です。
最初から高すぎる目標を設定したり、急に運動強度を上げたりすると、怪我のリスクが高まるだけでなく、モチベーションの低下にも繋がりかねません。
まずは、ご自身の体力レベルに合ったメニューを選び、正しいフォームを習得することから始めましょう。継続することが最も重要なので、楽しみながら取り組める方法を見つけることが大切です。ここでは、初心者が特に注意したいポイントについて解説します。
無理のないメニューの選び方
ランニングや筋トレを始める際には、無理のないメニューを選ぶことが継続するための鍵となります。最初から長距離を走ったり、高負荷の筋トレを行ったりするのではなく、ご自身の体力レベルに合った負荷と頻度から始めることが重要です。
例えば、ランニングであればウォーキングから始め、徐々に走る距離や時間を増やしていく、筋トレであれば自体重を使った簡単なトレーニングから始めるなど、段階的に強度を上げていくのがおすすめです。インターネットや書籍、トレーニングアプリなどを参考に、初心者向けのメニューを探してみましょう。無理なく続けられるメニューを選ぶことで、運動習慣が定着しやすくなり、着実に体力アップを目指すことができます。
筋力トレーニングで意識したい体力作り
ランニングのための筋力トレーニングでは、単に筋肉を大きくすることだけを目標にするのではなく、ランニングに必要な全身の体力を総合的に向上させることを意識しましょう。
特に、長時間一定のペースで走り続けるために必要な筋持久力や、着地時の衝撃に耐えるための筋力、そして体のバランスを保つ体幹の強さが重要になります。これらの要素をバランス良く鍛えることで、疲れにくい体を作り、より効率的にランニングを行うことができます。
毎日同じ部位を鍛えるのではなく、筋肉が回復する時間も考慮に入れ、全身の筋肉をバランス良くトレーニングするメニューを組みましょう。無理のない範囲で継続し、徐々に体力をつけていくことが、ランニングを長く楽しむために大切です。
継続するためのコツ
ランニングや筋トレを継続するためには、モチベーションを維持するための工夫が必要です。一人で行うのが難しい場合は、友人や家族と一緒に取り組んだり、ランニングクラブやジムに参加したりするのも良いでしょう。
また、目標を立てることも継続の助けになります。
例えば、「〇kmを目標タイムで走る」「〇kgの重さで筋トレができるようになる」など、具体的で達成可能な目標を設定し、クリアしていくことで達成感を得られます。
毎日完璧に行おうと気負いすぎず、体調が優れない日は休むなど、柔軟に対応することも長く続けるためのコツです。無理なく続けられる頻度やセット数で取り組み、運動を習慣にしていきましょう。
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資格
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・JATI-ATI (JATI認定トレーニング指導者)
・NASM-PES (全米スポーツ医学協会認定パフォーマンス向上スペシャリスト)
・NASM-GFS (全米スポーツ医学アカデミー認定ゴルフフィットネススペシャリスト)
・IASTM SMART TOOLs
【参考文献】
Kang, J., Robertson, R. J., Goss, F. L., DaSilva, S. G., Suminski, R., Utter, A. C., & Metz, K. F. (2009). Effect of preceding resistance exercise on metabolism during subsequent aerobic session. Journal of Strength and Conditioning Research, 23(3), 1037–1044.
Drummond, M. J., Vehrs, P. R., Schaalje, G. B., & Parcell, A. C. (2005). Aerobic and resistance exercise sequence affects excess postexercise oxygen consumption. Journal of Strength and Conditioning Research, 19(2), 332–337.