【五月病に運動は効果的?】新生活の不調を整えるための原因と対策

【五月病に運動は効果的?】新生活の不調を整えるための原因と対策

新年度が始まり、環境の変化にまだ身体も心も追いついていない。
そのような状態が続くと、気分の落ち込みや倦怠感、やる気の低下など、いわゆる「五月病」と呼ばれる不調が出やすくなります。

実際、五月病を経験した人を対象とした調査では、全体の約35%が経験ありと回答しており、自覚症状としては「やる気が出ない」が最も多く、続いて「気分が落ち込む・不安になる」「職場や学校に行きたくない」「朝起きられない」「疲れが取れない」などが挙げられています。さらに、不調の継続期間は1〜2週間が最多だった一方で、約26%は1か月以上続いたと回答しています。対策としては、休息やリラックス、趣味の時間、睡眠の質の改善に加え、運動が役立ったという回答も見られました。[1]

このように五月病は、多くの方が経験し得る身近な不調です。
一方で、「ただの気分の問題」と軽く捉えすぎるのも適切ではありません。

今回は、五月病の正体を整理したうえで、なぜ運動が対策として有効なのか、そして実際にどのように取り入れればよいのかを、運動の専門家の視点から解説します。

 

 

五月病とは?医学的にはどのように捉えられるのか

まず前提として、五月病は医学的な正式診断名ではありません。
一般的には、新年度や新生活などによる環境変化のあとに起こる、心身の不調をまとめて指す通称として使われています。

近年では、このような状態は適応障害や、場合によってはうつ状態の入り口として捉えられることがあります。適応障害とは、就職、異動、進学、人間関係、生活環境の変化など、明確なストレス要因に対して過剰な情動反応や行動反応が起こり、日常生活や社会生活に支障をきたす状態です。[2][3][4]

主な症状としては、以下のような変化が見られます。

情動面:落ち込み、不安、イライラ、意欲低下
身体面:不眠、倦怠感、食欲低下、疲労感
行動面:集中力低下、朝起きられない、仕事や学校に行きたくない、人との関わりを避ける など [3][5]

適応障害は、ストレス要因への曝露から3か月以内に発症し、原因となるストレスが軽減・消失すると、比較的早期に改善へ向かうことが多いとされています。一方で、状態が長引いたり、ストレスへの対処が難しい状態が続いたりすると、うつ病へ移行する可能性もあるため注意が必要です。[2][3][5]

つまり五月病は、「春だから何となく調子が悪い」で片づけるのではなく、環境変化に対する心身の適応反応が崩れたサインとして捉えることが重要です。

 

 

なぜ新生活で不調が起こるのか

新生活では、本人が自覚している以上に多くのストレスが重なります。

例えば、

入学、入社、異動、転勤
人間関係の変化
通勤通学リズムの変化
一人暮らしや生活習慣の変化
「早く慣れなければいけない」という心理的プレッシャー

こうした変化は、一つひとつは小さく見えても、積み重なることで心身への負担となります。
とくに真面目な人、責任感が強い人、完璧主義傾向がある人は、新しい環境に適応しようと頑張りすぎることで、エネルギーを消耗しやすい傾向があります。

ここで理解しておきたいのが、ストレス-脆弱性モデルです。これは、精神的な不調は「ストレスの大きさ」だけで決まるのではなく、その人がもともと持っている脆弱性、つまり性格特性や考え方のクセ、生活習慣、回復力などとの相互作用で生じる、という考え方です。[6]

同じ環境変化でも、ある人は問題なく適応できる一方で、別の人は強い不調を感じることがあります。
この違いは「弱い・強い」ではなく、ストレスに対してどのような脆弱性や保護因子を持っているかの違いとして理解する方が適切です。

 

 

五月病で見落としたくない「脆弱性」とは

五月病を考えるうえで重要なのが、あらかじめ持っている脆弱性を把握することです。代表的なものとしては、以下が挙げられます。

1. 神経症的傾向

不安や心配、恐怖、落ち込みなどのネガティブ感情を感じやすく、ストレス刺激に敏感に反応しやすい特性です。出来事そのものよりも、「どう受け止めるか」によって心身の負荷が強まることがあります。[7]

2. 完璧主義

目標設定が高く、失敗を許せず、「もっとやらなければ」と自分を追い込みやすい特性です。新生活では特に無理を重ねやすく、疲労の蓄積や自己批判の増大につながる可能性があります。[8]

3. 回避傾向

失敗や批判を恐れるあまり、人間関係や課題そのものを避けることで安心を得ようとする傾向です。短期的には楽になっても、長期的には不安の固定化や孤立につながりやすくなります。[9]

これらの脆弱性があるから悪い、ということではありません。
大切なのは、自分はどういう時に崩れやすいのかを知り、それを補う習慣を持つことです。

 

 

五月病対策として運動が有効な理由

ここで本題である「五月病と運動」の関係です。
結論から言えば、運動は五月病対策として非常に有力な選択肢の一つです。

もちろん運動だけで全てが解決するわけではありません。
ただし、五月病に関わる「気分の落ち込み」「睡眠の質の低下」「意欲低下」「不安感」「行動量の低下」といった要素に対して、運動は多面的に働きかけることが期待できます。

運動のメリットは、大きく4つに整理できます。

1. 気分の落ち込みや不安の軽減

運動は、抑うつ症状の改善に有効であることが複数の研究で示されています。[10]
五月病は正式な病名ではないものの、落ち込み、不安、意欲低下といった症状を含むため、こうした面に対して運動がプラスに働く可能性は十分考えられます。

2. 行動活性化につながる

気分が落ちると、人は「何もしたくない」「外に出たくない」と行動量が落ちやすくなります。
しかし、行動量の低下はさらに気分を下げる悪循環を生みます。

そこで重要になるのが行動活性化です。これは、楽しさや達成感につながる行動を少しずつ増やすことで、気分や意欲を改善していく考え方です。[11]
運動はこの行動活性化の入り口として非常に使いやすく、「5分歩く」「軽くストレッチする」といった小さな行動でも、回避の連鎖を断ち切るきっかけになります。

3. 睡眠の質を整えやすい

五月病の不調では、寝つきが悪い、眠りが浅い、朝起きられないなど、睡眠の乱れが目立つことが少なくありません。
睡眠は感情調整やストレス耐性と深く関わっており、睡眠不足はネガティブ感情の増大や集中力低下を招きやすくなります。[12][13]

適度な運動は生活リズムの安定や睡眠の質の改善につながりやすく、結果として情緒の安定にも寄与します。

4. 自己効力感を高めやすい

「今日は10分歩けた」「1駅分だけ歩けた」「少し身体が軽くなった」
このような小さな成功体験は、自己効力感、つまり「自分は対処できる」という感覚を高める助けになります。

五月病の状態では、「何もできていない」「自分だけうまくいっていない」と感じやすくなります。
だからこそ、運動を通じて“できた感覚”を積み重ねることには大きな意味があります。

 

 

五月病のとき、どんな運動をすればよいのか

大切なのは、追い込むことではなく、続けられる強度で始めることです。
気分が落ちている時期に、いきなり高強度のトレーニングを始める必要はありません。むしろ「やらなければ」がプレッシャーになり、逆効果になる場合もあります。

おすすめは以下の3つです

1. ウォーキング

最も始めやすく、負担が少ない方法です。
まずは10〜20分程度、やや気分転換になる強度で歩くことから始めましょう。朝に日光を浴びながら歩けると、体内リズムを整えるうえでも有効です。

2. 軽い筋トレ

スクワット、ヒップヒンジ、プッシュアップ、チューブトレーニングなど、短時間で全身を使える内容がおすすめです。
筋トレは身体感覚を取り戻しやすく、達成感も得やすいのがメリットです。週2回程度から始めると取り入れやすいでしょう。WHOでも、成人は有酸素運動に加えて、主要筋群の筋力トレーニングを週2日以上行うことが推奨されています。

3. ストレッチや呼吸を伴う運動

強い疲労感がある場合は、まずストレッチや軽いモビリティ、ゆっくりした呼吸練習から始めるのも良い方法です。
「身体を整える」感覚を優先すると、心理的ハードルが下がります。

運動を続けるコツは「最低ラインを低くすること」

五月病対策で最も避けたいのは、最初から完璧を目指すことです。
真面目な方ほど、「週4回運動しよう」「毎日30分歩こう」と高い目標を立てがちですが、調子が落ちているときはその目標自体が負担になりやすくなります。

おすすめは、以下のように最低ラインを極端に低く設定することです。

5分だけ外に出る
1駅分だけ歩く
スクワットを10回だけやる
寝る前にストレッチを3分だけやる

これでも十分です。
重要なのは、ゼロを避けることです。少量でも継続できれば、生活リズム、行動量、自己効力感の改善につながります。

 

運動だけで解決しようとしないことも大切

一方で、次のような状態が強い場合は、運動だけで対応しようとしないことも大切です。

気分の落ち込みが強く、2週間以上続いている
食事がほとんど取れない
不眠が続いている
仕事や学校に行けない状態が続いている
趣味や人との関わりにも全く興味が持てない
「消えたい」「いなくなりたい」と感じることがある

このような場合は、早めに医療機関や専門家へ相談することをおすすめします。適応障害はストレス要因が明確なことが多い一方、状態によっては専門的な介入が必要になることがあります。NHSでも、適応障害では気分の落ち込み、不安、睡眠障害、疲労、日常生活への支障などが生じ得ると案内されています。

 

まとめ|五月病対策は「頑張る」より「整える」

五月病は、甘えでも気合い不足でもありません。
新生活という大きな環境変化に対して、心身が適応しようとした結果として起こる不調です。

その対策として重要なのは、

ストレス要因を整理する
自分の脆弱性を知る
保護因子を増やす

この3つです。

その中でも運動は、
気分の安定、行動活性化、睡眠の改善、自己効力感の向上といった複数の面から、五月病対策をサポートできる実践的な方法です。

ただし、必要なのはハードな運動ではありません。
まずは散歩でも、軽い筋トレでも、ストレッチでも構いません。大切なのは、今の自分に合った負荷で、心身を少しずつ整えていくことです。

「最近なんとなく調子が出ない」
「新生活の疲れが抜けない」
そのような時こそ、無理に頑張るのではなく、身体を動かすことを通じて、自分のコンディションを見直してみてはいかがでしょうか。

 

Dr.トレーニングでは、一人ひとりの身体の状態や生活背景に合わせて、無理なく続けられる運動習慣づくりをサポートしています。
「運動をしたいけれど、何から始めるべきかわからない」「自己流で効率が悪い気がする」という方は、ぜひ一度無料カウンセリング・体験トレーニングをご活用ください。

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【著者情報】
東田 雄輔
– 資格
・NSCA-CPT(全米エクササイズ&コンディショニング協会認定パーソナルトレーナー)
・JATI-ATI(日本トレーニング指導者協会認定トレーニング指導者)
・NASM-PES(全米スポーツ医学協会認定パフォーマンス向上スペシャリスト)
・NASM-GFS (全米スポーツ医学アカデミー認定ゴルフフィットネススペシャリスト)
・IASTM SMART TOOLs
・PRI Postural Respiration 修了
・PRI Pelvis Restoration 修了
・PHI pilates act

https://drtraining.jp/cast/higashida/

[参考文献]

[1] 大研バイオメディカル株式会社. 五月病を経験した人は3割超!その原因と乗り越え方とは? 2026年4月8日閲覧
[2] Regier, Darrel A., Emily A. Kuhl, and David J. Kupfer. “The DSM‐5: Classification and criteria changes.” World Psychiatry 12.2 (2013): 92-98.
[3] O’Donnell, Meaghan L., et al. “Adjustment disorder: current developments and future directions.” International Journal of Environmental Research and Public Health 16.14 (2019): 2537.
[4] Casey, Patricia, and Susan Bailey. “Adjustment disorders: the state of the art.” World Psychiatry 10.1 (2011): 11.
[5] O’Donnell, Meaghan L., et al. “A systematic review of psychological and pharmacological treatments for adjustment disorder in adults.” Journal of Traumatic Stress 31.3 (2018): 321-331.
[6] Zubin, Joseph, and Bonnie Spring. “Vulnerability: A new view of schizophrenia.” Journal of Abnormal Psychology 86.2 (1977): 103.
[7] Thompson, Edmund R. “Development and validation of an international English big-five mini-markers.” Personality and Individual Differences 45.6 (2008): 542-548.
[8] Hewitt, Paul L., and Gordon L. Flett. “Perfectionism and stress processes in psychopathology.” (2002).
[9] Leventhal, Allan M. “Sadness, depression, and avoidance behavior.” Behavior Modification 32.6 (2008): 759-779.
[10] Schuch, Felipe B., et al. “Exercise as a treatment for depression: a meta-analysis adjusting for publication bias.” Journal of Psychiatric Research 77 (2016): 42-51.
[11] Cuijpers, Pim, Annemieke Van Straten, and Lisanne Warmerdam. “Behavioral activation treatments of depression: A meta-analysis.” Clinical Psychology Review 27.3 (2007): 318-326.
[12] Buysse, Daniel J. “Sleep health: can we define it? Does it matter?.” Sleep 37.1 (2014): 9-17.
[13] Walker, Matthew P. “The role of sleep in cognition and emotion.” Annals of the New York Academy of Sciences 1156.1 (2009): 168-197.
[14] WHO. Physical activity guidance for adults: at least 150–300 minutes of moderate-intensity physical activity per week and muscle-strengthening activities on 2 or more days per week. 

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