【熱中症対策】運動時にやるべきことは?科学的根拠にもとづく8つの方法をトレーナーが解説 パーソナルジム・パーソナルトレーニングならDr.トレーニング

【熱中症対策】運動時にやるべきことは?科学的根拠にもとづく8つの方法をトレーナーが解説

「梅雨が明けたら本格的な夏。でも、結局のところ運動時の熱中症対策って何をすればいいの?」——毎年この時期になると、こうした声を多くいただきます。

インターネットで検索すると対策情報はたくさん出てきますが、なかには科学的な裏付けが乏しいものも少なくありません。せっかく対策するなら、質の高いエビデンス(科学的根拠)に支持された方法を選びたいものです。

今回は、運動時の熱中症対策として本当に効果が期待できる方法を、研究論文をもとに8つにまとめて解説します。スポーツやトレーニングに取り組む方はもちろん、屋外で活動するすべての方に役立つ内容です。ぜひ最後までご覧ください。

 

 

そもそも熱中症とは?運動時にリスクが高まる理由

熱中症とは、高温・多湿な環境下で体内の熱をうまく外へ逃がせなくなり、体温調節機能が破綻することで起こる健康障害の総称です。めまいや立ちくらみ、筋肉のけいれん、大量の発汗といった軽度の症状から、頭痛・吐き気、意識障害といった重度の症状まで、幅広い段階があります。

運動時に熱中症のリスクが高まるのは、筋肉が活動することで体内に大量の熱が生み出されるためです。運動中の体は、安静時の何倍もの熱を発生させます。この熱を汗の蒸発などで逃がしきれないと、深部体温(体の内部の温度)が上昇し、熱中症へとつながっていきます。

特に日本の夏は気温だけでなく湿度も高く、汗が蒸発しにくいため、熱がこもりやすい環境です。だからこそ、「なんとなく」の対策ではなく、根拠にもとづいた正しい対策が重要になります。

ここからは、科学的根拠が充実している対策を、効果の確かさが高いものから順に紹介していきます。

 

 

1. 暑熱順化(しょねつじゅんか)——最もエビデンスが充実した対策

運動時の熱中症対策として、最も科学的根拠が充実しているのが「暑熱順化(馴化)」です[1][2]。暑熱順化とは、暑い環境に体を少しずつ慣れさせていくプロセスのことを指します。

方法

暑熱環境での20〜90分程度の身体活動を、5〜14日間継続して実施します。いきなり長時間・高強度で行うのではなく、体調を見ながら徐々に慣らしていくのがポイントです。

期待できる効果

暑熱順化が進むと、体には次のような変化が現れます。

  • 運動時の深部体温の上昇が抑えられる
  • 発汗が始まるタイミングが早くなる
  • 発汗量が増え、汗による放熱がしやすくなる
  • 汗に含まれる電解質(主にナトリウム)の損失が減る
  • 暑熱環境での心拍数の増加が抑えられる

つまり、同じ暑さのなかでも「体温が上がりにくく、効率的に汗をかき、必要な塩分を体に残せる」体へと変化していくのです。夏本番を迎える前の準備期間に、少しずつ体を暑さに慣らしておくことが、シーズンを通した熱中症予防の土台になります。

 

 

2. 体を冷却する——プレクーリング・パークーリング

体を積極的に冷やすことも、深部体温の上昇を抑えるうえで効果的です[3]。これはアスリートに限らず、屋外で活動する多くの人が活用できる方法です。

運動前に体を冷やす「プレクーリング」、運動中に冷やす「パークーリング」のどちらも、パフォーマンスの向上や熱中症リスクの低下に役立つことがメタ分析で示されています。

主な冷却方法

  • 冷却ベストの着用
  • 氷などで冷やした飲料の摂取
  • 冷水浴
  • 首・脇・鼠径部(そけいぶ)など、体表に近い太い血管がある部位の冷却
  • 手のひら・足の裏・頬など、動静脈吻合(ふんごう)部の冷却
  • ミスト+送風による冷却

期待できる効果

これらの冷却によって、深部体温の低下、運動を継続できる時間の延長、そして熱中症リスクの低下が期待できます。特に首や脇、手のひらなどは効率よく熱を逃がせるポイントなので、休憩中に意識して冷やすとよいでしょう。

 

 

3. 適切な水分補給——脱水を防ぐことが予防の基本

脱水状態を防ぐことは、熱中症予防の基本中の基本です[4][5]。体内の水分が不足すると、汗による体温調節がうまく働かなくなり、深部体温が上がりやすくなります。

タイミングごとの目安は次の通りです。

  • 運動前:体重1kgあたり約5〜10mlの水分補給(体重60kgの方なら約300〜600ml)
  • 運動中:運動前と比べて体重の減少を2%以内に抑えるように、こまめに補給する
  • 運動後:失った体重の約1.25〜1.5倍の水分を補給する(運動前後で体重が1kg減っていたら、約1.25〜1.5Lを補給)

脱水率が体重の2%以上になると、体力や判断力の低下が顕著になり、熱中症のリスクが高まることが分かっています。「喉が渇いてから飲む」ではすでに脱水が進んでいることも多いため、こまめに、計画的に補給することが大切です。

 

 

4. ナトリウム(塩分)の補給——大量発汗時は特に重要

大量に汗をかく場面では、水分だけでなくナトリウム(塩分)の補給も欠かせません[6]。

大量発汗時に水だけを飲み続けると、体内のナトリウム濃度が薄まり、「低ナトリウム血症」や筋けいれんを招くリスクがあります。運動時に足がつる、体調が悪くなるといった症状の背景に、塩分不足が関わっているケースも少なくありません。

一般的には、1Lあたり500〜700mg程度のナトリウム(塩分)を含む飲料が推奨されています。適量のナトリウムを含んだ飲料には、発汗で失われたナトリウムを補いつつ、喉の渇きに気づきやすくして体の水分保持を助ける効果が期待できます。市販のスポーツドリンクや経口補水液を上手に活用するとよいでしょう。

 

 

5. 暑い時間帯の運動を避ける——環境を整える

対策の効果という点で、環境そのものを調整することは非常に有効です[7]。特に**WBGT(暑さ指数)**が高い時間帯は、熱中症のリスクが大きく高まります。

厚生労働省の調査によると、2020年以降の熱中症による死傷者数は午後15時台に最も多く、次いで午前11時台がピークであることが分かっています。これは昼前後から気温と湿度が急上昇するためで、特に11時から15時にかけては日差しも強く、屋外での活動が危険になりやすい時間帯とされています。

可能であれば、早朝や夕方など比較的涼しい時間帯に運動時間をずらす工夫をしましょう。当日の暑さ指数は、環境省の「熱中症予防情報サイト」で確認できます。

環境省 熱中症予防情報サイト:https://www.wbgt.env.go.jp/wbgt_data.php

 

 

6. 服装の工夫——通気性と吸汗速乾性がカギ

暑熱環境で運動するときは、ウェア選びも重要な熱中症対策になります[8][9]。

ポイントは、明るい色で、通気性・吸汗速乾性の高いウェアを選ぶこと。明るい色は太陽光を反射しやすく、通気性・吸汗速乾性の高い素材は汗の蒸発を助けて放熱をサポートします。

また、ラグビーやアメフト、ラクロスなど防具を着用する競技では、装備そのものが放熱を妨げ、熱中症リスクを高めることが知られています。こうした競技では、休憩中に防具を外して体を冷やす、冷却グッズを併用するなどの対策が特に勧められます。

 

 

7. 氷飲料(アイススラリー)の活用

氷飲料——凍らせてシャーベット状にした飲料や、氷を入れた飲料——は、実用的な熱中症対策として近年注目されています[10][11]。

氷飲料は、同じ量の冷水よりも冷却効果が高く、運動前に摂取することで深部体温を効果的に下げられることが示されています。氷が溶ける際に体内の熱を多く奪うため、少量でも効率よく体を冷やせるのが特長です。

ただし注意点もあります。運動中に氷飲料を使うと発汗量が減少するため、深部体温が必ずしも通常の冷水より低く維持されるとは限りません。とはいえ、運動前のプレクーリングとしては非常に有効な手段であり、手軽に取り入れられる対策として活用する価値があります。

 

 

8. 体調管理——「今日はやめる」判断も対策のうち

最後に、意外と見落とされがちなのが日々の体調管理です[12][13]。次のような状態のときは、熱中症のリスクが高まります。

  • 睡眠不足:判断力や疲労耐性が低下し、自律神経や体温調節への影響が関与すると考えられています。
  • 発熱:体温がすでに上昇しており、熱を逃がす能力も低下しています。
  • 下痢・嘔吐:水分・電解質の喪失を招き、体の水分量や循環血液量が減少します。
  • 二日酔い:アルコールによる利尿作用で脱水が進み、判断力も低下します。

こうした日は、運動の強度を下げる、あるいは思い切って中止するという判断が重要です。「せっかくだから」と無理を押して運動することが、重大な熱中症につながることもあります。体からのサインを見逃さず、休む勇気を持つことも、立派な熱中症対策のひとつです。

 

 

まとめ——正しい知識で、夏も安全にトレーニングを

今回は、運動時の熱中症対策として科学的根拠が充実している8つの方法を紹介しました。

改めて整理すると、暑さに体を慣らす「暑熱順化」を土台としつつ、体を冷やす、適切に水分と塩分を補給する、暑い時間帯を避ける、服装を工夫する、氷飲料を活用する、そして日々の体調を管理する——これらを組み合わせることで、熱中症のリスクを大きく下げられます。

夏は暑さを理由に運動を諦めてしまいがちですが、正しい対策を知っていれば、安全に体を動かし続けることができます。とはいえ、「自分の体調やレベルに合った運動強度が分からない」「暑い季節でも安全にトレーニングを続けたい」という方も多いはずです。

 

Dr.トレーニングでは、採用率3%以下の厳選されたプロトレーナーが、一人ひとりの目的や体調に合わせてメニューをカスタマイズします。空調の整った環境で、専門知識を持つトレーナーのもと、安全かつ効果的にトレーニングに取り組めます。

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【著者情報】
東田 雄輔
– 資格
・NSCA-CPT(全米エクササイズ&コンディショニング協会認定パーソナルトレーナー)
・JATI-ATI(日本トレーニング指導者協会認定トレーニング指導者)
・NASM-PES(全米スポーツ医学協会認定パフォーマンス向上スペシャリスト)
・NASM-GFS (全米スポーツ医学アカデミー認定ゴルフフィットネススペシャリスト)
・IASTM SMART TOOLs
・PRI Postural Respiration 修了
・PRI Pelvis Restoration 修了
・PHI pilates act

https://drtraining.jp/cast/higashida/

 

参考文献

[1] Tyler, Christopher J., et al. “The effects of heat adaptation on physiology, perception and exercise performance in the heat: a meta-analysis.” Sports Medicine 46.11 (2016): 1699-1724.

[2] Armstrong, Lawrence E., et al. “American College of Sports Medicine position stand. Exertional heat illness during training and competition.” Medicine and Science in Sports and Exercise 39.3 (2007): 556-572.

[3] Bongers, Coen C.W.G., et al. “Precooling and percooling (cooling during exercise) both improve performance in the heat: a meta-analytical review.” British Journal of Sports Medicine 49.6 (2015): 377-384.

[4] Cheuvront, Samuel N., et al. “Mechanisms of aerobic performance impairment with heat stress and dehydration.” Journal of Applied Physiology 109.6 (2010): 1989-1995.

[5] Sawka, Michael N., et al. “Integrated physiological mechanisms of exercise performance, adaptation, and maladaptation to heat stress.” Comprehensive Physiology 1.4 (2011): 1883-1928.

[6] Rosner, Mitchell H., and Justin Kirven. “Exercise-associated hyponatremia.” Clinical Journal of the American Society of Nephrology 2.1 (2007): 151-161.

[7] Eifling, Kurt P., et al. “Wilderness Medical Society clinical practice guidelines for the prevention and treatment of heat illness: 2024 update.” Wilderness & Environmental Medicine 35.1_suppl (2024): 112S-127S.

[8] Di Domenico, Isaiah, Samantha M. Hoffmann, and Paul K. Collins. “The role of sports clothing in thermoregulation, comfort, and performance during exercise in the heat: a narrative review.” Sports Medicine-Open 8.1 (2022): 58.

[9] Morris, Nathan B., et al. “Sustainable solutions to mitigate occupational heat strain—an umbrella review of physiological effects and global health perspectives.” Environmental Health 19.1 (2020): 95.

[10] Naito, Takashi, et al. “Does cold water or ice slurry ingestion during exercise elicit a net body cooling effect in the heat?” (research article).

[11] Bongers, Coen C.W.G., et al. “Precooling and percooling (cooling during exercise) both improve performance in the heat: a meta-analytical review.” British Journal of Sports Medicine 49.6 (2015): 377-384.

[12] Roberts, William O., et al. “ACSM expert consensus statement on exertional heat illness: recognition, management, and return to activity.” Current Sports Medicine Reports 22.4 (2023): 134-149.

[13] Casa, Douglas J., et al. “National Athletic Trainers’ Association position statement: exertional heat illnesses.” Journal of Athletic Training 50.9 (2015): 986-1000.

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