2022.01.21

【妊婦 筋トレ】妊娠中の正しいトレーニング解説| Dr.トレーニング

 

※ 弊社Dr.トレーニングでの妊婦さんへの運動指導は、以下の条件を満たした上で実施しております。

 産婦人科医から、母体の健康、妊娠経過・胎児発育に関して、適切な診断・処置を受け、運動開始の許可を得ている

 運動指導の開始は妊娠12週目以降

弊社マタニティトレーニングライセンス保持者による指導

 

妊婦さんにおすすめの筋トレは?妊娠中の正しいトレーニング解説

 

妊娠中に筋トレはしても良いの?妊婦さんの運動の必要性

 

妊娠中の運動・筋トレの重要性

なぜ、妊娠中の運動は重要なのか?

日本では妊婦さんが積極的に運動をすることに対して、不安視されることも少なくありません。
『妊娠中にも今までの運動を継続したかったけど、利用している施設から利用を断られた』
『ネットの情報をみても、妊娠中に何が安全にできるか、自分では判断ができない』
このような声を多く聞いてきました。

Dr.トレーニングでは、適切な医科学的知識と指導経験を持ったトレーナーが、このような不安を解消し、妊娠中〜産後のトレーニング(筋トレ)を提供しています。
まず、妊娠中の運動・筋トレが大切な理由をお伝えします!
一言でまとめると、“リスクヘッジ” のためです!
この言葉は、投資や経営の分野で使われる言葉で、『起こりうるリスクを予想し、それに対応できる体制をとって備えておく』という意味です。

妊娠期、出産から産後の心身と生活環境の変化は、内容や程度の差はあれ、全て妊婦さんに起こります。
例えば、妊娠中の体重増加、出産時の体へのダメージ、産後の体型の崩れ、肩こり・腰痛などの不調。これらに悩まない妊婦さんはいないと思います。
妊娠中の運動・筋トレの習慣は、これらの悩みに対する解決策となります!

 

運動不足の危険

なぜ、妊娠中の運動不足は良くないか?

産婦人科の分野で世界的な権威を持つACOG(米国産婦人科学会)では、以下のような声明を出しています。

“Women with uncomplicated pregnancies should be encouraged to engage in aerobic and strength-conditioning exercises before, during, and after pregnancy.” [1]

意訳すると、『健康上の問題がない女性は、妊娠前から産後を通じて、有酸素運動、ストレッチや筋トレなど、専門家の指導を受けて実践するべき』ということになります。
運動不足によって引き起こされる、母子への健康リスクとして、下記のようなものがあります。

妊娠中の過度な体重増加・肥満  [1]
妊娠糖尿病、妊娠高血圧症候群の発症 [2]
子宮・胎盤への循環不全による流産・早産 [3]
巨大児(出生体重が4000g以上の赤ちゃん)の出産 [2]
赤ちゃんの将来における生活習慣病のリスク向上 [3]

まとめると、妊娠中の過度な体重増加が自身だけでなく、お子様の将来の健康状態にも関わることがある、ということです。

また妊婦さんからは、『妊娠してから疲れやすい、肩こり・腰痛が気になる、腹筋の力が抜けて姿勢が崩れた気がする、食欲が増して体重増がコントロールできない』という悩みをよく聞きます。
運動・筋トレが習慣によって健康リスクを下げつつ、妊娠中のお悩みも解決できます!

 

妊婦さんの筋トレはどんなメリット・効果がある?

効果:ある働きかけによってもたらされる、よい結果。成果。効き目。
メリット:価値。利点。長所。功績。

 

妊娠中の運動の効果は?

妊娠中に運動習慣を身につけることで、以下のような効果が期待できます。

【お母さんへの効果】

– 肩こり・腰痛が楽になる
– 心の不安やストレスを軽減する [4]
– 不定愁訴(原因がわからないけど、何となく調子が悪い)が少なくなる
– 睡眠の質・時間の改善 [5]
– 適度な体重増加を維持しやすくなる
– 出産直後の疲労感、産後のリカバリーが早くなる [6]
– 産後に体型を戻しやすくなる

【赤ちゃんへの効果】

– 脳の発達を促す [7]
– 出生体重や健康状態が良く生まれてきやすい [8][9]

お母さんと赤ちゃんが元気で健やかに過ごすために、運動習慣を身につけることも大切です。
妊娠中の良い習慣は、良い出産・産後へとつながっていくと思います。

運動といっても、ウォーキング、ヨガ、ピラティス、ストレッチ、筋トレ、スポーツなどありますが、妊婦さんがやりやすいと感じるものから始めることをおすすめします。

 

妊娠中の筋トレのメリットは?

運動の種類はたくさんありますが、妊娠中の筋トレ(マタニティトレーニング)のメリットもお伝えします。

– 運動経験と体の悩みに合わせて、トレーニングの内容・キツさが調整できる
– 目的が明確でわかりやすい(おしり・ふともも、腰回りを引き締めたい、姿勢を改善する など)
– 普段使っていない筋肉・関節を意識しやすい(どのように動けば、おしりやデコルテ周りの筋肉をつけられるか?)
– 場所を選ばずにできる(寝ながらできる二の腕・お尻の運動、マシンやウェイトなど器具を使う)

筋トレ・トレーニングと聞くと、『アスリートやボディービルダーがやるもの』『辛くなるまで追い込まないと効果がない』というイメージを持たれやすいですが、実際は目的に合わせて、内容・強度など細かく調整をしています。
何をやって良いか迷ったときは、ぜひ運動指導のプロに頼ってみてください!

 

妊婦さんはいつから筋トレを始めるべき?臨月でも大丈夫?

『妊娠中のトレーニングっていつから始めるの?』
『臨月になって体重が増えてきてしまって…今からでも初めて大丈夫?』
という質問をよくいただきます。

Dr.トレーニングでは、
「体調が落ち着いてくる妊娠12〜16週で開始、破水や陣痛などが起きるまでの妊娠37〜40週で終了」を目安であると考えています。

つわりの症状、妊娠経過、里帰りでの移動などを考慮して、担当トレーナーと相談しながらベストなタイミングを決められます。

『妊娠中に筋トレをしてもいいのか不安…』
こちらもよくご質問をいただきますが、マタニティトレーニングでは
『母子の健康と安全が最優先』
『妊婦さんが、疑問、不安や不快感を感じるメニューは実施しない』
を、前提として運動・筋トレをの指導をしています。
最適な運動は妊婦さんよりに違いますが、各妊娠周期に応じて、快適で効率的にトレーニングを進め方法はあります。

 

妊娠初期

妊娠12週からの筋トレは可能ですが、安定期までお腹の赤ちゃんに何かあっては不安と思ったり、つわりの症状で体調が優れない妊婦さんも少なくありません。

そのため実際には、本格的な運動開始を妊娠16週からとする場合が多いです。
妊娠してから久しぶりに体を動かしたり、運動初心者で自信のない妊婦さんには、器具使った筋トレだけではなく、体の調子を整える、ストレッチ、ピラティス、ヨガもお勧めしています。
妊娠初期では、胎動を感じられずお腹の中の赤ちゃんの様子が心配だったり、今まで経験のない体調不良や気分の浮き沈みで、心も不調になることがあります。
そんなときこそ妊婦さんが運動を通じて、自身の体を労ったり、向き合う時間をゆっくりと取ることで、赤ちゃんとの繋がりを感じてもらうというのも大切かと思います。

 

妊娠中期

安定期に入り体調も落ち着いたところで、いよいよ本格的な運動開始といったところです。

また、妊娠初期から続けてきた運動を継続しつつ、ウォーキング、スイミング、マタニティビクスなどの有酸素運動もおすすめできます。
この時期での筋トレのポイントは、妊娠後期と出産に必要な体力、筋力、体の動きを養うことです。
大きくなるお腹や体重を支えるための、お尻、ふともも、お腹の筋肉を鍛えたり、姿勢の変化によって、股関節や肩甲骨周りが動きづらくので、軽い負荷で関節を動かす運動・筋トレを多く取り入れます。
特に安産を望む場合、出産時に行ういきみや姿勢の変換と保持がスムーズにできることが大切です。
産後の方の意見も聞くと、下半身の筋トレ(スクワット、デッドリフト、ヒップスラスト)を妊娠後期までに正しく行えるようになることも重要です。
腹筋運動も行いますが、妊婦さんの場合は平らな床から上体を起こすものは、腹筋を使っている感じがわかりづらく、お腹周りも圧迫しやすいので、それ以外のものをおすすめしています。

 

妊娠後期

妊娠後期から臨月以降の筋トレはそれ以前に行ってきたものから、腹筋・下半身の運動を減らす、姿勢を変えるなど工夫をしつつ、上半身のメニューを多めに入れるようにします。

理由は、上半身の筋トレはお腹の大きさに関係なく快適にできることが多く、産後の育児(授乳・抱っこ)で必要な筋肉と体の動きを覚えるのに良いからです。
しっかり妊娠初期〜中期くらいからトレーニングをしてくださっているお客様には、マシンでのトレーニングも行いヒップアップやボディメイクも一緒に行うこともあります。
この時期はお腹がより大きくなる影響で、仰向けのメニュー(ベンチプレスなど)を長時間行うと、気分が悪くなる妊婦さんもいるので、注意はしておいた方が良いです。
産後に備えての運動が多いですが、この時期にマタニティフォトを撮る方もいて、健康管理をしつつボディメイクのメニューを取り入れることもあります。

 

妊娠中の筋トレの注意点・気を付けたいNG例は?

 

 

妊娠中の運動で注意すること

より安全・安心に妊娠中の筋トレを実施するため、運動前の体調、運動を中止すべき状態、妊娠中の身体の変化を考慮することが重要です。

 

【開始前のセルフチェック】

・違和感、不安感、疲労感はないか?
・平熱以上の体温ではないか?
・普段どおりの胎動はあるか?
・特に胎動に関することは、指導者が直接確認できないため、お母さん自身での確認が必要です。

 

【開始後に中止すべき状態(ACOGガイドライン)[1]】

・子宮出血、羊水の漏れ
・腹部痛・痛みを伴う子宮収縮
・呼吸困難
・めまい・失神
・頭痛、胸部痛
・バランスを失い、体に力が入らない
・ふくらはぎの痛みや腫脹
・運動中にこのような違和感を感じたら、すぐに運動を中止してお医者さんへ相談してください。

 

【妊娠中の身体の変化】

・腰、膝、背中や肩への負担が増える
・リラキシンというホルモンの影響で、関節が緩く不安定になりやすい
・体重増加による過度な反り腰・猫背など姿勢が崩れやすい
・腹筋がお腹の重みで引き伸ばされ、力を入れづらくなる
・お子さんの発育に合わせて、心臓、肺、胃腸、膀胱が圧迫される

これらの変化を考慮して、妊娠中に避けたほうがよいメニューを確認しましょう。

 

 

妊娠中の筋トレで避けたほうが良いメニューは?

妊娠中のトレーニングによって、母子ともに健康に良い影響を受けられますが、避けるべきこともあります。

 

【筋トレで避けるべきメニュー】

・ダッシュ、ジャンプなど、急な加速と減速を含む運動(転倒によるケガ、不要な子宮収縮につながる)
・高重量を扱うスクワットやデッドリフト(息が止まってしまう。腰回りへの負荷が高すぎる)
・うつ伏せの運動(腹部を圧迫して苦しいため)
・仰向けの運動(仰臥位低血圧症候群の症状が出る場合はやらない)
・一部の腹筋運動(腹直筋離開が疑われる場合)

どのメニューが完全にOK・NGというのは決まっていませんが、上記のものを無理に行ってもデメリットしかありません。
実際には、上記メニューのスクワット・デッドリフト、腹筋運動、仰向けの運動も、妊婦さんの身体を考慮し、安全・快適に行う方法はあります。

Dr.トレーニングで筋トレを指導する場合は必ず、運動を行う理由、意識すべき筋肉やポイントを伝え、妊婦さんが理解・安心して運動ができるようにしています。

 

妊娠中に無理せず効果的な筋トレを行うポイント

妊娠中の体調は、人によって大きく異なることは想像がしやすいと思いますが、実は運動も同じで、例えば同じスクワットでも、妊婦さんによって感じ方が全く違うこともあります。
妊娠中の筋トレを行うときはひと工夫することで、より安全・快適になります。
ここでは、使いやすい2つのポイントをおさえておきましょう。

 

適切な運動強度は心拍数&会話で把握

心拍計機能付きのスマートウォッチなどを確認しつつ、1分間の心拍数が150拍程度を上限として、最大心拍数(年齢-220)の40〜80%の範囲での運動が安心です。運動中は息があがっても、会話の内容を把握でき、継続できる程度の強度にとどめることをおすすめします。

 

前傾姿勢をとる運動やスクワットでは、足幅を横に開いてつま先を外に向けておく

こうすることで、妊娠に伴って大きくなるお腹が鼠径部やお腹周りを圧迫せず、快適にメニューを行えることが多いです。妊婦さん自身で筋トレをする際は、違和感がない姿勢で行うこと、ジムで指導を受けるときは、鼠径部などの不快感があれば、インストラクターさんへすぐに伝えるようにしてもらえると良いです。

 

妊婦さんにおすすめの筋トレのまとめ

運動・筋トレにはたくさんのメリットがあり、妊娠中や産後の悩みを解決するためのヒントが多くありますが、妊婦さんに適切な指導ができる施設が限られています。Dr.トレーニングは、『一瞬ではなく一生モノの体作り』をミッションとして、多くの妊活中、妊婦中から産後の女性をサポートしています。今後もすべての方が安心・快適なトレーニングができるパーソナルジムを目指していきます。

ドクタートレーニングの各店舗のお問い合わせはこちらから
https://drtraining.jp/contact/

 

 

【筆者プロフィール】

Dr.トレーニング|マタニティ事業部責任者
青柳 陽祐

【学歴】

ラッセル大学 アスレティックトレーニング&スポーツサイエンス学部 ATC学科

【職歴】

慶應義塾大学医歯薬学部ラグビー部

東京健康科学専門学校 非常勤講師

コモゴルファーズアカデミー

【資格】

NATA-ATC(全米アスレティックトレーナーズ協会認定トレーナー)

 

【関連記事】

【アメリカ国家資格者が勧める】妊婦さんにおすすめのスクワットとは

 

参考文献

[1] Syed, H., Slayman, T., & Thoma, K. D. (2021). ACOG Committee Opinion No. 804: Physical Activity and Exercise During Pregnancy and the Postpartum Period. Obstetrics & Gynecology, 137(2), 375-376.

[2]金山尚裕. (2007). 子宮胎盤循環不全からとらえた妊娠高血圧症候群. 日本産科婦人科学会香川地方部会雑誌9(1), 1-8.

[3] 福岡秀興. (2010). 胎児期の低栄養と成人病 (生活習慣病) の発症. 栄養学雑誌68(1), 3-7.

[4] 北村歌菜, & 寅嶋静香. (2016). メンタルヘルス向上を図るプログラムが運動の継続性に与える影響について~ 産後女性の事例報告より~. 北海道体育学研究= Hokkaido journal of physical education, health and sport sciences51, 69-78.

[5] Costa, D. D., Rippen, N., Dritsa, M., & Ring, A. (2003). Self-reported leisure-time physical activity during pregnancy and relationship to psychological well-being. Journal of Psychosomatic Obstetrics & Gynecology24(2), 111-119.

[6] Thornton PL, Kieffer EC, Salabarria-Pena Y, Odoms-Young A, Willis SK, Kim H, and Salinas MA. Weight, diet, and physical activity-related beliefs among pregnant and postpartum Latino women: The role of social support. Matern Child Health J 10: 95-104, 2006.

[7] Labonte-Lemoyne, E., Curnier, D., & Ellemberg, D. (2017). Exercise during pregnancy enhances cerebral maturation in the newborn: a randomized controlled trial. Journal of clinical and experimental neuropsychology39(4), 347-354.

[8] Doustan, M., Seifourian, M., Zarghami, M., & Azmsha, T. (2012). Relationship between physical activity of mothers before and during pregnancy with the newborn health and pregnancy outcome. Journal of Physical Education and Sport12(2), 222.

[9] Barakat, R., Perales, M., Garatachea, N., Ruiz, J. R., & Lucia, A. (2015). Exercise during pregnancy. A narrative review asking: what do we know? British journal of sports medicine49(21), 1377-1381.

 

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