2024.07.30

【妊娠中の悩み解決】妊婦の便秘|原因や解消法をプロが解説

こんにちは!
Dr.トレーニングマタニティ事業責任者の青柳です。

『妊娠前はなかったのに、妊娠中・産後に便秘に悩んでいる…』

今回は便秘についての情報を整理し、妊娠中でもできる対策をお伝えします。

まず始めに【便秘】がどのような状態か、改めて確認しておきましょう!

便秘:本来体外に排出すべき糞便を十分量かつ快適に排出できない状態 [1]

便秘症:便秘による症状が現れ、検査や治療を必要とする状態」であり、以下の6項目のうち、2項目以上を満たす場合は、便秘症と診断されます。[1]

・排便4回中1回以上の頻度で、
          強くいきむ必要がある
–          便の状態が、コロコロした形または硬い
–          残便感がある
          直腸・肛門付近の詰まり、排便が困難と感じる
          手を使って補助しないと排便が困難

・自発的に排便できる頻度が週に3回未満

上記の項目に心当たりがある方は、早期に適切な介入を受けるため、医師へ相談することをおすすめします。

ここから先は、妊娠中の便秘にフォーカスした情報をお伝えします。

なぜ便秘が身体に悪いのか?

便秘は身体に悪そうというイメージがありますが、身体にどのような影響があるのでしょうか!?
ここで簡単にまとめてみました!

・肛門への負担と痔:硬い便を無理に排泄しようとすると、肛門への負担でいぼ痔・切れ痔になる可能性があります。
・産後の尿・便失禁:便秘の状態でいきむことにより、子宮や臓器を支える骨盤底筋群への負担が増加し、産後の失禁のリスクを高める要因となります。[2]
・腸内環境の悪化:適切に排便がされないことで、腸内環境が崩れてしまいます。身体に必要な栄養素の吸収と老廃物の排出が妨げられ、肌荒れ・ニキビ、むくみが起こりやすくなります。
・気分や感情の変化:腸内では、気分・感情を支配するホルモン(セロトニン)が多く生成され、腸と脳は主に迷走神経を通じて情報交換をしています。腸内環境が悪化すると、脳内セロトニンのもと(トリプトファン)が減少します。[3] 脳内セロトニンの減少とうつ病・パニック障害の発症リスク増加は、相関関係が示唆されています。[4]
・胃や食道の不調:便秘によって胃の中に未消化物が残りやすくなると、胸焼け、げっぷ、逆流性食道炎などの原因となる場合があります。
・腹痛:便秘による腹部の膨満感により、日常生活でのお腹の張りも強く感じやすくなります。強い腹痛は切迫早産、流産の兆候にも重なり、便秘の症状と混同してしまう可能性があります。

 

妊娠中の便秘の原因

マタニティ期間中は妊娠周期の経過により、便秘が起こりやすい状態となります。
ここでは妊娠初期、中期、後期〜産後と期間別に原因をまとめてみました!

妊娠初期の便秘

妊娠初期は多くの妊婦さんがつわりの症状を経験し、妊娠前の食習慣が乱れてしまいがちです。いくつか例を挙げてみました。

・朝食を抜いてしまう、毎日決まった時間の食事ができない(腸の蠕動運動が起こりづらく、便が腸内に止まる時間が長くなる)
・吐きづわりによる嘔吐(便から水分が失われやすくなり硬くなる)
・匂いづわりで食べられる食品の量と種類が減る(便の量が減り、便意を感じづらくなる。野菜や発酵食品など食物繊維を多く含む食品が食べられないため、腸内環境が悪化) 

妊娠中期の便秘

妊娠中の女性ホルモンの影響も無視できません。

エストロゲン、プロゲステロンというホルモンは出産や授乳に備え、女性の体内に水分と脂肪を蓄積させる働きがあります。
特にプロゲステロンの分泌量が増加する妊娠中期は、腸のぜん動運動と便の水分量が減少しやすいため、便秘の症状が起こりやすくなります。妊娠前の排卵後から月経前の期間で便秘になりやすかった方は、特に注意が必要かと思います。

また、妊娠初期のつわりの症状や安心して運動ができる環境がなかったことによる運動不足も便秘の原因となり得ます。

運動不足になることで、
“腸のぜん動運動がが減少しやすい”
“肛門に負担をかけない排便に適した体位を取るための体力が低下する”
ということが起こりますが、特に2つ目は重要であると考えています。
具体的な運動の便秘への効果は後ほど解説します。

妊娠後期〜産後の便秘

妊娠後期〜産後は、胎児の発育と出産/分娩の過程により、身体の状態が大きく変化します。
妊娠後期は、胎児の発育により子宮が大きくなると腸や直腸が圧迫され、便の流れが妨げられることでの便秘が懸念されます。

また、産後は出産経過での会陰部の損傷(切開と縫合、裂傷など)や痔の発生、産道の傷に対する恐怖感により、便秘の症状が出ることもあります。
産前・産後の生活環境の変化による過度な不安が自律神経などに影響を与え、大腸の働きが低下して便秘につながる[4]ということも考えられます。

 

妊娠中の便秘の解消法

『妊娠中は便秘になりやすいけど、どうにか改善できる方法はないか?』
ここからは、妊娠中でも手軽に実施できることを紹介いたします。

※腹痛やお腹の張りを感じ、以下の症状が出ているときは便秘だと思って我慢せず、医師へ相談をしてください!

・普段より痛みや張りが強く、突き刺すような痛みがある
・排便時に出血がある
・痔ができてしまった
※便秘改善のために薬剤に頼る方法もありますが、体調や妊娠中の状態により適さないものもあるため、薬剤師・医師への相談をしてください!

軽い運動を実施する

妊娠中の運動に関してどのように実施して良いか不安な場合、まずは1日10-30分程度のウォーキング(普段の通勤や用事の合間でもOK)から初めてみてください。
特に妊娠中のリモートワークなどで外に出る機会が少ない方は、体力の衰えによって便秘が起こりやすくなるため[5]、ぜひ意識してもらいたいです! 

つわりの時は食べ方を工夫する

つわりの症状で妊娠前のように食事が摂れない場合は、“食べられるものを少しずつ、食事回数を分けて食べる“ことで、便量を増やすことができます。
特に温かい、消化に良い、刺激の少ない食べ物を選んでみてください。

 水分、食物繊維、乳酸菌の3点セットを摂取する

妊娠中は、便が水分不足により硬くなってしまうため、1日あたり1.0-2.0Lを目安として、こまめにお水や白湯など、体調に合わせて摂ってみてください。
食物繊維の摂取も意識するのも良いです!食物繊維でも、水溶性と不溶性(水に溶けるもの・溶けないもの)があります。
どちらが自分に良いかわからない場合は、“排便時の状態”で判断してみてください。

 水溶性食物繊維:
・コロコロした小さい便
・硬くて出づらい

 不溶性食物繊維:
・柔らかい・液状に近い便
・色が茶色・黒色に近く、匂いが強い便

 ※食品による食物繊維の種類・含有量は、こちらで詳しく記載があります

健康長寿ネット 食物繊維の働きと1日の摂取量
https://www.tyojyu.or.jp/net/kenkou-tyoju/eiyouso/shokumotsu-seni.html

 また、腸内環境という言葉が今回多く出てきていますが、乳酸菌を接触的に摂取することも、母子の健康づくりに役立ちます。
発酵食品などに含まれる乳酸菌が、腸内環境の改善することで、便秘の症状を改善する効果が期待されています。[6] [7]

 Dr.トレーニングでは、腸内環境改善に特化したプロテインも開発しており、味が選べておいしく飲め、水分、食物繊維※1、乳酸菌の3点セットが妊娠中・産後方でも摂りやすくなっています!
https://drtrainingplus.jp/collections/protein 

※1 イヌリン:水溶性食物繊維の一種。大腸の腸内細菌のエサとなり、腸の働きを改善する効果が期待できる。

 

妊娠中にいきんで大丈夫か?

『便秘になってからトイレでいきむことが多くなったけど、お腹の赤ちゃんの健康に影響はないか?』と不安になるかもしれませんが、母子の妊娠経過に異常がなければ、排便時のいきみが流産や早期破水などの直接的な原因となることは考えられません。[8]
しかし、浣腸や薬剤を使用しても改善しない便秘の場合は、強くいきむことで痔になってしまう可能性があるため、無理にいきまない方が良いです。

 

便秘予防のためにできること

朝型生活

便秘予防のためには、自律神経の働きを適正にする必要がありますが、寝不足や夜型生活により、サーカディアン(概日)リズムが崩れ、自律神経の働きが乱れてしまいます。朝に起きてきちんと朝食を食べることで、胃結腸反射(胃への刺激が迷走神経、脊髄、骨盤内臓神経へと伝わり、結腸のぜん動運動を引き起こす)[9]により排便を促しやすくなります。

排便に必要なポジションが取れるようにする

先に説明したウォーキングは最も簡単で誰でも実施しやすい運動ですが、和式便所にをしゃがむ姿勢が適切に取れることが、便秘の予防につながります。
しゃがむ姿勢(骨盤が後傾し腰が丸まったポジション)が大切な理由は3つあります。

1.座り姿勢と比べ、直腸肛門角が緩やかになるため[10](便の通り道の直腸と出口となる肛門の位置関係が垂直に近づく)、排便がしやすくなる
2.いきむ時に恥骨直腸筋(直腸を輪ゴムで結ぶように働き、便が漏れないようにする筋肉)が緩みやすくなるため[10]、排便がしやすくなる
3.骨盤の下の穴(骨盤底筋群が覆っている部分)がわずかに広くなり、出産時に赤ちゃんの頭が通りやすくなるため。

 要は、便秘対策としてのしゃがむ姿勢が安産にも役に立つと言うことです!
和式便所にしゃがむ姿勢は妊娠中に難しくなる場合が多いので、以下のスクワットを実施してみてください。 

ウォールアシストフルスクワット

壁に手をつき、足は肩幅でつま先を30°ほど開いて立つ

 

お尻を後ろに引きながら、膝より低い高さまでしゃがんで立ち上がる

つらい時は、しゃがみの深さを浅くしたり、足とつま先を開いて実施する

 

妊娠中の便秘の解消法 – まとめ –

今回は妊娠中に起こりやすい便秘についてお話をしました。

本来は妊娠を意識する前から身体を整えることが最善ですが、妊娠中や産後でも便秘の予防・改善のためにできることはたくさんあります。

Dr.トレーニングでは、妊娠中だけではなく産後から先の母子の健康を願い、それぞれのお身体や希望に合わせた、運動、食事、休養の生活習慣を整えるお手伝いをしています。

便秘でお困りの方も、ぜひ一度体験トレーニングとカウンセリングを受けていただけるとうれしいです!

 https://drtraining.jp/maternity_lp/

【筆者プロフィール】

Dr.トレーニング|マタニティ事業部責任者
青柳 陽祐

【学歴】
ラッセル大学 アスレティックトレーニング&スポーツサイエンス学部 ATC学科

【職歴】
慶應義塾大学医歯薬学部ラグビー部
東京健康科学専門学校 非常勤講師
コモゴルファーズアカデミー

【資格】
NATA-ATC(全米アスレティックトレーナーズ協会認定トレーナー)

 

参考文献・資料

[1] 便秘と食習慣 | e-ヘルスネット(厚生労働省)https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/food/e-02-010.html

[2] Amselem, C., Puigdollers, A., Azpiroz, F., Sala, C., Videla, S., FernándezFraga, X., … & Malagelada, J. R. (2010). Constipation: a potential cause of pelvic floor damage?. Neurogastroenterology & Motility, 22(2), 150-e48.

[3] 藤田紘一郎. (2012). こころとからだの免疫学—腸内細菌の働きを中心に—. 心身健康科学, 8(2), 69-73.

[4] Fan, W., Kang, J., Xiao, X., Li, L., & Yang, X. (2020). Causes of constipation during pregnancy and health management. Int J Clin Exp Med, 13(3), 2022-2026.

[5] Yurtdaş, G., Acar-Tek, N., Akbulut, G., Cemali, Ö., Arslan, N., Beyaz Coşkun, A., & Zengin, F. H. (2020). Risk factors for constipation in adults: a cross-sectional study. Journal of the American College of Nutrition, 39(8), 713-719.

[6] SUZUKI, K. (2014). Beer spoilage lactic acid bacteria-A new hypothesis on their origin and evolution. Journal of the Brewing Society of Japan, 109(8), 568-575.

[7] 片山直美, 住田実穂, & 森田菜緒美. (2006). 乳酸菌摂取による便秘改善に対する評価. 名古屋女子大学紀要 家政・自然編, (52), 87-91.

[8] Ács, N., Bánhidy, F., Puhó, E. H., & Czeizel, A. E. (2010). No association between severe constipation with related drug treatment in pregnant women and congenital abnormalities in their offspring: a populationbased casecontrol study. Congenital Anomalies, 50(1), 15-20.

[9] 松尾巖. (1935). 胃結腸反射 Gastro-colo-reflex. 實驗消化器病學, 10(8), 1093-1094.

[10] 槌野正裕, 荒川広宣, 石井郁江, 西尾幸博, 高野正太, 山田一隆, & 高野正博. (2011). 排便姿勢と直腸肛門角, 排出量の関係 排便造影検査 (Defecography) による研究. In 理学療法学 Supplement Vol. 38 Suppl. No. 2 (第 46 回日本理学療法学術大会 抄録集) (pp. AcOF1012-AcOF1012). 日本理学療法士協会 (現 一般社団法人日本理学療法学会連合).

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