2024.06.15
妊娠中のつらい肩こり、これで解消!
目次
Dr.トレーニングは、メディカルパーソナルジムとして【マタニティトレーニング】をもっと広めていきたいと考えております。
女性であれば誰しもが思う「母子ともに健康で元気な赤ちゃんを産みたい!」という願いに最大限寄り添ってトレーニングを提供しております。
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今回の記事はマタニティトレーニングにおいて圧倒的な臨床経験を誇る、Dr.トレーニングのマタニティに関連する記事となります。
こんにちは!
Dr.トレーニングマタニティ事業部責任者の青柳です。
今回は妊娠中に多い悩みの一つ、肩こりについて原因と専門的な知識を解説し、予防と改善方法を、お客様から多いご質問に回答をしながらお伝えします!
妊娠中の肩こりの原因
まず、妊娠中に肩こりが起きやすい原因をお伝えさせていただきます。
1.姿勢の変化
「妊娠中の姿勢変化により、首・肩と背中にある筋肉の緊張が高まる」
ということになります。
”これをきっかけに身体に何が起こるか?”を知っておけば、肩こりの予防と改善は可能ですが、これは後ほど専門的に解説します。
ところで、みなさんは妊娠中にこのような姿勢に心当たりはありませんか?
イメージ通り、妊娠中は胎児の発育に伴いお腹が大きくなることで、反り腰、猫背、巻き肩、頭が前に出やすく、姿勢不良が起きやすい状態となります。
さらに、この姿勢不良によって頭の重さを支える筋肉(A)と姿勢・体重を支える筋肉(B)が過度に緊張した状態となります。
※他にもありますが、今回は代表的なものだけ書いています
A:斜角筋、胸鎖乳突筋、僧帽筋上部、肩甲挙筋、頭板状筋、頚板状筋
B:大胸筋、小胸筋、僧帽筋中部・下部、菱形筋
妊娠中の肩こり対策に必要なこれらの筋肉は、マタニティトレーニングで必ず柔軟性や筋力を確認するものとなっています。
2.ホルモンバランスの乱れ
もう一つ肩こりの原因として無視できないのが、女性ホルモン(エストロゲンとプロゲステロン)の影響です。
妊娠中の肩こりは以下の理由から、女性ホルモンの影響による体のむくみと血液の循環不良が原因の一つであると考えられます。
妊娠時は非妊娠時と比べ、エストロゲンとプロゲステロンの分泌量が大幅に増加し[8]、以下のような働き(→肩こりとの関連について)があります。
・血管の拡張と新生も促され、体内に水分を溜め込みやすくなる(血液が肩周辺の筋肉に集まるが、同時に体のむくみを感じやすくなる)[9]
・副交感神経と交感神経を興奮させる(自律神経による血管の拡張・収縮の調整がうまく行かず、肩周辺の筋肉で血液循環が悪くなる)[10]
肩こりの症状を専門的に解説
妊娠中は肩こりが起きやすい状態にあると説明をしましたが、ここでは少し専門的な解説を入れます。
まず、肩こりの定義ですが、「後頭部から肩、および肩甲部にかけての筋肉の緊張を中心とする不快感、違和感、鈍痛などの症状、愁訴」[1]
となります。
肩こりの「首・肩、背中に痛み、だるさや違和感を感じている状態」ですが、主に3つの原因に分類されます。
症候性肩こり(原因疾患が明確)
病院・クリニックで診断がつくものが原因で症状が現れている状態です。整形外科、消化器科、眼科、耳鼻科、脳外科などの領域で問題があると判断された場合、疾患の治療を実施することで、肩こりの症状も改善される可能性があります。
本態性肩こり(原因がわからない)
身体に明確な損傷がないと判断されても、なぜか肩こりが気になる場合はこちらに当てはまります。妊娠中のお客様から多く聞かれる、姿勢が悪い、デスクワークが長い、授乳・抱っこで疲れる、運動不足などは、医学的には疾患ではないですが、肩こりの症状を悪化させる要因となります。
心因性肩こり(精神的ストレス)
産後うつ、マタニティブルーズ、不眠症など、心療内科・精神科で診断される疾患や、苛立ちや気分の落ち込みも肩こりの要因となります。これらの状態では疼痛閾値が低く(痛みを感じやすい状態)なっており[2]、肩こりの症状が増悪する可能性が高くなります。
これは私見ですが、筋トレによる肩こり改善効果は、筋力が向上することが主な理由の1つで、女性の方が男性よりも筋トレの効果を感じやすいと考えています。
・女性は男性と比べ、骨格筋(運動や姿勢維持に使う筋肉)量が約36%(上半身だと約40%)少ないとされているが[3]、運動量が同じであれば、増加する筋肉量の性差はなく、むしろ筋力は女性の方がより増加した[4]、という研究結果。
・妊娠中の筋トレによる筋肉量増加は、正確に測定することが困難ですが、トレーニングメニュー記録を振り返ると、ほとんどのお客様で扱えるウェイトの重さや反復回数が増えていることから、少なくとも妊娠中でも筋力アップはできると考えられる。
また始めに、「妊娠中の姿勢変化により、首肩と背中にある筋肉の緊張が高まる」と書きましたが、筋緊張が高まることで、
1 交感神経優位状態が続く
↓
2 筋肉への血流が悪くなり、循環が上手くできない
↓
3 筋肉から痛みを誘発したり、炎症を起こす物質(ブラジキニン、プロスタグランジンなど)が産生される
↓
4 慢性的な肩こり、1に戻る
といった繰り返しが起こってしまいます。[5] [6]
肩こりの予防、改善方法
ここから、妊娠中の肩こりが辛い方向けの予防・改善方法となりますが、Dr.トレーニングでの肩こり対策の考え方として、「始めに筋肉の緊張をやわらげてから、次に筋力が不足している筋肉を刺激する」ことをお客様へ提供しております。
1.ストレッチ
今回は妊娠中でも簡単にできる、筋緊張をやわらげる肩こり解消ストレッチをご紹介します。
※伸ばす強さは呼吸が止まらない、痛気持ちいいと感じる程度にして、1回30秒程度キープをしてみてください
首・肩のストレッチ
伸ばしたい側の腕を後にして組み、手のひらも後を向けておく
※頭を傾ける方向は、斜めや横に変えることで伸びる場所を変えられます
背中のストレッチ
両手をデスクに置いて、背中を丸めて伸ばしてみる
胸のストレッチ
片手をデスクに置き、逆の手は鎖骨から胸を覆うように触れておく
片手を置いたまま、体を前に出して手で覆われている部分の筋肉を伸ばす
2.体を温める
体を温めることで、むくみと血液の循環不良を改善する効果が期待できます。冷えを感じやすい方は、気温・室温に応じた服装の調整、入浴や体を温める食べ物を摂ることで対策が可能です!
厚生労働省が出しているコラムも参考になります!
https://www.bosei-navi.mhlw.go.jp/health/column-18.html
3.寝る姿勢、寝具の見直し
妊娠中の寝る姿勢も肩こりに影響します。
妊娠周期が進むことで仰向けでの就寝が難しくなり、横寝をすることが増えますが、左右同じ側の肩をずっと下にしていることで首肩の負担も増えてしまいがちです。
https://drtraining.jp/media/28061/
こちらの「妊娠中の寝る姿勢・向き」についての記事にもありますが、睡眠が取りやすい姿勢を何種類か持っておくことが大切です。
また、抱き枕も利用しても良いと思いますが、「横向き寝でも楽なマットレス」をネットで検索して、検討してみてはいかがでしょうか…
マットレスを変えることで、妊娠中は肩・腰の負担を減らし、産後の子育てでは腕枕や添い寝による腕の痺れや首肩の負担軽減にも役立ちます!
妊娠中の肩こりについてよくいただく質問への回答
また、妊娠中の肩こりに関して、お客様から多い質問への回答もまとめたので、少しでもお役に立てればうれしいです!
Q.妊娠中の肩こりで整体に行くのは大丈夫でしょうか?
A.安静療養が必要な疾患がなければ大丈夫です。快適な施術を受けるため、”長時間維持すると苦しくなる姿勢”、”腰、骨盤、股関節周辺の違和感”の有無を事前に伝えておくと良いです。
Q.妊娠中の肩こりで湿布などは使っていいですか?
A.妊娠中に使用できない成分が含まれる湿布もあるため、使用前に医師・薬剤師に相談した上で使用をしてください。
Q.妊娠中の肩こりで頭痛もあります。改善のためにマッサージはやっていいですか?
A.はい!問題はありませんが、マッサージガンなどの圧・振動を用いた器具の利用は控えてください。マッサージボールやツボ押し棒を用いて、肩中兪・肩外兪(けんちゅうゆ・けんがいちゅう)を刺激してみてください。
Q.妊娠中の在宅勤務で肩こりを軽くする工夫はありますか?
A.20-20-20ルール※を意識し、適度な散歩とご紹介したストレッチを合わせて、1日20分以上実践してみてください。
※ 20-20-20ルール:連続して20分デジタル端末画面を見て作業をしたら、20 Feet(約6m)離れたところを20秒間眺めること。眼精疲労の防止に効果的。[7]
妊娠中の肩こりについて (まとめ)
今回は妊娠中の肩こりについての知識と対策方法についてお伝えしました。
Q&Aの具体的な回答に関しては、一般的な回答とさせていただきました。
ご自身の生活環境やお体の状態によって、最適な肩こり対策は異なるため、より具体的なアドバイスが欲しい方は、ぜひDr.トレーニングまでお問い合わせをください!
https://drtraining.jp/maternity_lp/
【筆者プロフィール】
Dr.トレーニング|マタニティ事業部責任者
青柳 陽祐
【学歴】
ラッセル大学 アスレティックトレーニング&スポーツサイエンス学部 ATC学科
【職歴】
慶應義塾大学医歯薬学部ラグビー部
東京健康科学専門学校 非常勤講師
コモゴルファーズアカデミー
【資格】
NATA-ATC(全米アスレティックトレーナーズ協会認定トレーナー)
参考文献
[1] 伊藤達雄. (1997). 肩こりの診断のポイント. クリニシャン, 44, 495-498.
[2] 佐藤園枝, 加賀順子, 青木隆, 関恒夫, 釼持和彦, 伊藤彰紀, … & 石田和人. (1995, April). 382. 有痛性疾患患者の心理的要因について (第 2 報). In 理学療法学 Supplement Vol. 22 Suppl. No. 2 (第 30 回日本理学療法士学会誌 第 22 巻学会特別号 No. 2) (p. 382). 日本理学療法士協会 (現 一般社団法人日本理学療法学会連合).
[3] Janssen, I., Heymsfield, S. B., Wang, Z., & Ross, R. (2000). Skeletal muscle mass and distribution in 468 men and women aged 18–88 yr. Journal of applied physiology.
[4] O’hagan, F. T., Sale, D. G., MacDougall, J. D., & Garner, S. H. (1995). Response to resistance training in young women and men. International journal of sports medicine, 16(05), 314-321.
[5] 神田賢, 北村拓也, 佐藤成登志, 古西勇, 鈴木祐介, 渡辺慶, & 久保雅義. (2020). 若年女性の慢性肩こり有訴が頸部に影響を及ぼす因子─「本態性肩こり」 における頸部屈伸筋群の持久力, 最大筋力および頸部機能に着目して─. 理学療法科学, 35(4), 483-487.
[6] McQuay, H. (1999). Opioids in pain management. The Lancet, 353(9171), 2229-2232.
[7] 日本眼科医会 ギガっ子デジたん!活用マニュアル https://www.gankaikai.or.jp/info/giga_manual.pdf
[8] 関西医科大学 内分泌基準値一覧
https://www2.kmu.ac.jp/tiken/client/kijunchi%204.pdf
[9] Bakker, J., & Baum, M. J. (2008). Role for estradiol in female-typical brain and behavioral sexual differentiation. Frontiers in neuroendocrinology, 29(1), 1-16.
[10] 丸山洋子, 丸山美穂, 吉田聡子, 佐伯由香, 高橋佳奈, & 吉沢豊予子. (1997). 性周期における自律神経機能の変動. 日本看護研究学会雑誌, 20(3), 132.